遠方から、三人の御子を車に乗せて来店の落ち着いた若い御母様が「主人が亡くなったので、毎日励みになる指輪を創りたい」という。
三人共が就学前で、長男さんも次男さんも子供とは思えない程の静かな態度で、末娘の一歳半位の女の子を抱いた母親と一緒に、リフォーム相談のテーブルを両脇から囲んでいた。あたかも母親の付き添い役を務めているかのような、初めて見る不思議な光景であった。
女の子が一歳位の時に"食道癌"がみつかり、すでに末期症状であったという。逝く人の無念な想いがいかばかりか想像しかねたが、二人の男の子の優しい目と静かな態度の中に、ご主人の想いが表れているのかも知れない・・・、あるいは父親から「母を守る様に」と遺言されたのかも・・・・等と思ってみた。
菓子にも手をつけず椅子から離れようとしない三人を、猫を連れてきて日の当たる方へ呼び寄せると、優しい目から優しい声が聞こえる様になった。兄達は、「あーちゃんが笑ったよ!!」「あーちゃんが・・・・したよ!!」と女の子を姫の様に大切に扱う。
人間の一生は"平等"と言われるが、"あーちゃん"は、父親から受けるはずだった愛情分も間違いなく得られる、と感じた。