昨年地金を売却なさったＯ様、今回はリフォームで御来店。沢山の素敵なリングをお持ちなのに、普段に着用出来るものが無いという｡

「確かに高級なオパールは、含水量が多く硬度も低く、ペンダントヘッドが良いかも知れないですね･･･｡」等余計な事を口走ってしまった後、「毎日１個位指輪を着けていたいのよ････」とおっしゃられ反省。

皆さまがリフォームにいらっしゃる第一の理由は”ここに有り”かも･･･と気づき､気を取り直して手を拝見して、シンプルで手に合うものをご提案させて頂いた。

Ｏ様のお話に、黙って微笑みながらお付合いの運転者の若い女性は、実の娘様かと当初思っていたが、なんとお嫁様でやはり実家のお母様から譲られたものが有るという。

そして５年前に当店で加工して下さったピアスを失くしてしまって残念で････」と、当時娘が担当だったらしく思い出せなかったのだが、その残念さは、同じ様に胸に伝わった。

「もしかしたら、譲られたものでピアス出来るかもよ････」と願いを込めてみた。「持ってきてみます･･･」とおっしゃり、次回にまたお二人揃って見えた時は、お嫁様の嬉しそうなピアスのリフォームの話を微笑みながら聞くお姑様がいた。

図らずも同じ様なダイヤが留まった指輪が2本あった。素晴らしい出会いに感謝!!。

Ｏ様のガーネットのビフォアーの写真は、うっかりして写真を取り忘れ、思い出しながら描いてみました。

美しい白髪で明るい笑顔のＯ様は、90過ぎのお姑様ともお嫁様達とも円満で、山登りがご趣味とか、足腰強く、孫の保育園のお迎えも引き受けているという素敵な方。

指輪はほとんど仕舞い放しで、「今後も使わないから・・・・」「ヘッドだったら使うと思うわ。」とおっしゃり、リフォームすることになった。

 角形の宝石ばかりなので、石枠造りは結構難しく、石枠に留める技も難しい。

 1回目につくったプラチナのヘッド枠は石留めの段階でうまくいかず、再度デザインから考え直して石留めに無理のないまろやかな雰囲気に変え、懐の大きいＯ様により似合うものができた。

Ｋ様のリングはペリドットの角形で、ほとんど使用感のないものだった。

20歳のお孫様にプレゼントなさりたいとのご意向らしい。

キリッとした良さを持つ角形石の角を目立たさず、見ただけで誰にでも好まれる、”愛らしい”ものにしたい為、やはり２回造ることになった。　

この２つのヘッドは裏側も写真を撮っておけば良かった!!と残念に思っている。

肌に密着することを考えて、裏側にかなりの時間をかけて丸く丸く角をとり、とろりと仕上げたから・・・・。

ダイヤで囲まれた丸いエメラルドのリングと、それと一緒になさっていたらしい、ｖ字型一文字のエメラルドとルビーをお持ち下さったI　様、「普段に使えるものに」と、リフォームは２回目のご来店。
 

緑と赤の強い色の組み合わせを、ダイヤの白で中和して穏やかな感じにし、全体の形も、幾何学的な硬い感じを避け、柔らかさを醸し出す、手造り風にまとめ、I　様の、ソフトなお人柄に合わせた。
 

　
栃木から見えたご夫妻様、ご主人がプレゼントしたという翡翠のりんぐを、お嬢様の結婚式にサプライズでプレゼントするので、リフォームしたいという。

写真（結婚式のドレスを試着なさっている）をみせて頂いたら、本当に華やかで愛らしい方なので、「指輪は地味過ぎてお似合いにならないでしょうねー・・・!!」と申し上げると、「ソウデスネ・・・・」ご両親は良く分からないらしい。「そういえば、娘は大きいものが好きで良くやっています！・・・」とお母様がおっしゃった。

「じゃあ胸元に付ける大きなクローバーにしましょうか!!」ということに。
クローバーは、同じハートを４個作り、それを寄せ合わせてつくった。ご両親とご本人と御婿様の心を繋いだように・・・・。

半円状の大きなマベパールをお持ちのＩ様、金製品を売却して、マベパールを白でシックな雰囲気にし、しまっておかないで使用したいという御希望である。

今の時勢は、金の上がり具合が大幅なので、嘗てプラチナの半値位だった金がプラチナと肩を並べる程となり、この現状から見ると、賢明なご判断ではある。

しかし高く売れる分、買うのも高いので、指輪とペンダントヘッドを、ペアで創るとなるとプラチナの分量もかかる。それで価格の節約と使用の違いを考慮して、ペンダントヘッドはホワイトゴールドをお勧めする。　同じ１８金でもK１８(WG）は18金ホワイトゴールド呼び、７５％の純金の料は同じなのだが、残り２５％に白い地がねのパラジウムとシルバーを入れ、プラチナの白に近づいた色となり、２割位低価格にできる。

パールを留める前に、ロジュームメッキをかければ、見分けは付かず、胸にぶら下がっているのであるから、傷がつき難く、メッキがはげる心配も無い。

お預かりのマベは高さが有り、肉感的に感じる所が、サッパリなさっているＩ様にそぐわない様なので、高さの半分を枠に落とし込み、お好きだという直線の八角形の枠にする。

出来上がってみると、爽やかで涼しげで、大人の雰囲気が漂い、I様にとても良く似合っていた。

何年か前､お嬢様の成人式の"プレゼント"と､それを機に自分達も､近い将来離れていくであろう娘達の幸せを想い続ける為に、お揃いで持っているチェーンに下げるヘッドを創ろう!､と栃木市からご来店くださった、仲良しご夫婦がいらっしゃった。

その方々が再来店｡余りのニコニコ顔にぽかーんとしていたが､数十秒たって当時の事柄がすべて思い起こされた。嬉しい事にお二人共が胸元に手を置いて｢毎日しています。｣とおしゃってくださった。

｢お似合いですよねー!!･･･良かった！」私は､”他家に嫁いだ娘が何とかお役にたって喜ばれかばれていた”かの様な思いで､チョッと照れながら答えた。

今回は「奥様の指輪をリフォーム･･･」とのご希望。胸元の"ヘッド"(娘さんへのプレゼント"にしたクローバーを葉っぱに貼り付けたデザイン）に合わせた指輪にしたら･･･、と提案させて頂く。

長身の奥様の指の長さに合う幅広リングにクローバーをあしらって、ピアスからはずした色も形も違う宝石を配置した。

同じ頃に来店下さったＡ様とＢ様は、50 ー60 歳位で同年代でいらっしゃる。Ａ様は､｢一文字のダイヤを何個か使用して普段使いのヘッドを････｣とご希望。

ダイヤ1 個使用でお創りしたのでは､年齢的にみて又使えなくなる、と判断してダイヤ３個使用でのデザインを描く｡が、図面は実際より大きく感じるという事もあり､｢大き過ぎるのでは？ダイヤは1 個でも良いのでは?･･･｣と派手さをご心配なされた。

｢同寸の大きさの製品を､実際に首にかけてみましょう！｣という事で着装の結果､やはり図面通りに創らせて頂く事に。

Ｂ様は､ご主人様から婚約指輪として頂いたエメラルドの指輪を｢ヘッドにしたい･･･｣とご希望で､当店のオリジナル製品の中から､｢これが好き！｣と六角形のシンプルな形を指差し､｢後は､おまかせします････」と｡

中央エメラルドは、細っそりとしなやかなＢ様に合う様ひし形状に、角ダイヤはその周りに愛らしく配置した。

栃木県の大平町から、御夫婦でご来店で来店。身内の方が残された宝石と、ご自身の手持ちのものを「一緒にして、胸に下げるヘッドにしたい」と･･･。直接担当した娘は、奥様とご主人二人から御希望を聞きつつ、おおよそのデザインを描いて、「そのような感じで結構です････」ということで、見積もりを出させて頂き、受注した。

後からその旨の報告を受け、実際に制作するデザインをチェックする。「その方は顎が細かった？丸みがあった？」いつものパターンではある。「少しホッソリかな･･･」返事を聞いて緑のメノウを囲んで留める１８金の形状を、「ひし形状に、曲線でもっていく様にして、優しい雰囲気と大人っぽさをだすように」と助言した。

上から描いたデザインは同じでも、真横の曲線の角度の違いで、愛らしさ・大人っぽさ・気品・若々しさ等表現出来る。この部分が、“その方に合わせるのが第一と考える”リフォームの醍醐味である。

取りに見えた時もお二人で、共に笑顔で喜び合って、何とも羨ましい方々であった。

Ａ様には、２年位前から修理や様々な加工の依頼を頂いている。度々依頼の内容をお伺いしていた娘とは、良く聞いているラジオ番組の話やら楽しい笑い声が聞こえるようになり、ゆったりと急がずにポーカーフェイスで話されるＡ様のお人柄に、”かわいい御人”と思うようになった。

ある日ご家族の様子を伺っている時に、思い切って年齢を尋ねると、何と私と同年齢ではないか!!････そのおしゃべりの仕方は、無言のうちに、自分の粗雑なしゃべり方を反省させていた････。

だから、このリフォームの依頼を受けたとき、悩まずにこのデザインを描きあげ、娘に渡した。数日後･･････、「シルバーで安く創ろうと思ったけどデザインが気に入ったからプラチナで創ります」とＫ様からご返事いただけた!!と娘は喜び、私も大喜びする。

プラチナは高価なだけに、シルバーの様にメッキをかけずともその色は少し黒っぽく落ち着きが出て、つやも永遠に失われない！さすが出来上がりは重量感が在り、可愛くとも軽っぽさがない。お似合いで“良かった、良かった。”

「合わせてヘッドが作れたら･･･」と、お馴染みのS 様がお母様から譲られたサファイアリング二本と、頂いたという簡単な銀枠に留められたオパールのヘッドをお持ちになった。

そのオパールは、青空に白い筋雲が浮かぶかの様な魅惑的なものだが、中央下に異物の混入が有り、、その周辺にひび割れが生じていた。

数日後、宝石カットを依頼する所を訪れる。驚いたのは、このオパールの類似品(混入物無し)に出会ったのだが、その価格は想像以上のもので“水脈が結晶して出来たもの”という理由も分かり、カット代金は、カット後の宝石の価格にすれば微々たるものと思われた。

サファイアを留めたプラチナの台地に水脈が埋まっている･･･風にデザインは自然に出てきて、何億年もの歳月で地球が創造した青白く透き通る中に、緑とかすかなオレンジの光を放つこのオパールは、S 様を感動させ、制作を促した。

制作は困難を極めたが、この美しい石が後押しし、何回かやり直して出来上がる。完成後の喜びは、S 様と制作者を美しさに共感させ、この宝石とS 様とのご縁に感謝であった。

「リフォームしたい････」とお持ちになったのは、どんな洋服にも合いそうなシンプルな黄水晶のヘッドと、上質なダイヤが使用されている三重のエレガントなヘッド、その他ピンブローチやルビーのリング等、デザインが古い訳でもない、普通の品々だった。

「もったいないですね！」と言うと、「そうなの、東京までいってリフォームしたけど一回も使ってないの････｣成る程、この方は”普通”が似合わない事をご自分で分かっている。この"心の中の美意識に合わせること"が､デザインを決める"最重要点"と気づいたのは私が50 代に入る頃であった。

60 代後半の､手の節が太くなった方の、指輪が回らないようリフォームしたモダンな指輪が、良さが理解されず、"もう一度やり直したい"と来店。その時偶然居合わせた客の「素敵なデザイン!!」「良く似合っている!!｣との絶賛の言葉に美意識の変革が生じて、助けられた。

今回は､"この位の大きさに･･･"と雑誌の切り抜きをお持ち下さり、美意識をはっきり表現下さったので、迷わずにデザインを提案出来、感謝している。