最初は近くにお住まいのお姉様からご紹介戴き、ルビーとラベンダーヒスイで、リングとヘッドのセットを創らせて頂く。長い指は、関節を越すと細くなっていて、リングがぐるぐると回り易い。その為に、広いリング幅をお勧めした。ルビーの赤い色は白髪に良く映えて、上品かつチョッピリ愛らしく見えるH様。
その後ご主人様と一緒に来店され、姪御様の結婚式になさりたいとかで、ブラックパールのイヤリングを注文戴く。御二人の静かな会話から、生活の中に"美"を忘れてはいない精神の豊さが感じられ、好ましく思えた。
1年位あと、偶然にも自治医大のエレベーターの中で、H様の御主人にばったり出合い、H様が脳腫瘍で手術をする、という心底からの憂いを知った。思わず、肌身離さず持っていた御守りを渡しつつ「手術は成功します!」と自分自身にも言い聞かせて言った。
2年後奥様から突然お電話を戴いた。「主人がガンなの!」自宅へ伺うと、奥様の回復を喜び、あの時の"御守り"を大事にしてくださっていた。優しい御二人の生活が続きます様に!とそれからは毎日数回祈っていた。
その後、「ホスピスに入りました」というお手紙を頂き、ある朝「主人が旅立ちました。・・」という、奥様の暗い夜空を静かに照らす月のような、悔いのない声を聞いた。そして1年後、御主人様からプレゼントのリングをリフォームにお持ちくださり、共に面影を偲んだ。