「この石が大好きなんですが、くるくる廻ってしまって・・・・」と、30年くらい前に手作りされた典型的なリングをお持ち下さった。確かにこの大きさの宝石の割にリングが細過ぎる。
「廻らない様にするためには、手との接触部分を多くしなくてはならないのですが・・・・、少し他の石を使用させて頂いて宜しいですか?」
この美しい石は半透明でぼんやりと手が透けてみえる。何十年の年月を、舅姑を看取り、夫と共に農作物を育てながら、働く嫁にも協力して孫を可愛がり、昔ながらの料理にも精を出して、家族の為に明るく動かしてきたそんな80歳の御方の手には、この石の繊細な光は、弱過ぎて儚過ぎると思えたのだ。
「おまかせしますよ、少しダイヤを使っても良いと思っていたので・・・・」と気持ちよく了承頂けた。
オパ-ルのキラキラした光を、地に足をつけて生きてきた人にふさわしくなる様に透き通らない翡翠を両脇に収めて中 和し、安定感のあるものにした。