「母の形見なので・・・・」と、物質を越えた愛おしさを添えてリフォ-ムに来店なさる方が多々ある。そんな時、「母親とは偉大であり幸せな存在だな-」と、尊敬と羨ましさから、勝手に"亡き母様"の姿を思い浮かべてしまう。その姿は決まって、子供の為には自己の事はどうでも良いという、自己犠牲の心を持ち、自己犠牲の行為を続けていたであろう姿である。
(A)のアメジスト持参の御方は、何年もしまっていて、「いつかはきっとリフォ-ムしようと思っていました・・・・」とおっしゃり、(B)のお方は必至の看護をなされた甲斐もなく去年旅だたれ、まだ悲しみが癒えていないことが言葉の端はしから窺えた。
不思議なことに、私への依頼は愛する母親を持った幸せな方たちと、まだ娘を見守っているであろう、この指輪を大切に使用してらした方々からの共同依頼と感じてしまうことである。
だから、「母上様に喜んでもらう為には娘様を喜ばせなくては・・・・」と、まだまだ微力なくせに、気づいてはいる。