結婚指輪の相談にいらっしゃったお二人、最初にご来店の時は、既に「この様な感じのものが・・・」という意向をお持ちで来られた様な気がしている。
記憶は定かではないが、それが余りにもお二人に似つかわしく無く、新しい門出を記すものとしては残念だという、いつものお節介根性から、こんこんと「常識的でない、二人だけのものを作った方が良くないですか?」と言い、実例のアルバムをお見せしつつ、実例の先輩たちがそのデザインを決めたいきさつ等を、思い出すままにしゃべったと思える。
記憶が定かでないのは、この様なケースは多く、二度目の来店が無いカップルも多々ある。有難くも当店に依頼下さったカップルは、正直にもの申す店主の言葉を良しと感じて下さった、素直な方々しかいないのである。
この方達も例にもれず、二度目のご来店の時のお二人の会話を聞いていると、相手のことを優先する、穏やかで優しい物言いに、お二人共がとても素直で、爽やかな印象であった。図々しくも「どこで出合われたのですか?」と聞いてみると「スポーツジムです」という。
「そうですか!!」と、ひとりで合点していた。 話の合間に、「車のナンバーが静岡になってますね!」と問うと、「僕は静岡の生まれで、こちらの会社に派遣されてきているんです」という。そして静岡から毎日富士山を見ていたこと、育った町が大好きな様子が窺えた。そして今選んでいた指輪の中に
「ここに富士山を入れることできますか・・・?」
「う~ん!狭いねー!う~ん!でも・・・よし!!やる!!
やってみよう!!」唸りながら、自分を励ましながらお引き受けした。
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