私が中学校まで生活していた実家のご近所さんで、今も変わらず針を握り、洋服の仕立て・和服の仕立て・直しもの等、皆に喜ばれながらお仕事をなさっているN様、80歳になろうとも小綺麗な装いで、その技も知恵もさすがの素晴らしさである。全く後人のお手本と思っている。
その精神力の源となっているのは、どうやらお孫様の存在らしく、日々成長を喜び・楽しみ、まだまだ先の成り行きを見守って行きたいという想いに溢れている。
この度は、お孫様が自治医大病院に医者として就職が決まったので、「このブローチと、結納返しに嫁がくれたこのタイタックで、ヘッドを......」とリフォーム依頼された。
当初は、立て爪型のダイヤがキラキラ美しいので、緑石の上に立て爪枠を乗せてほしい......という御希望でした。
「若い方に立て爪枠は可哀そうかも......」とお答えしましたが、その意味がお解り頂けないので、「リフォームの多くは立て爪枠に留められたダイヤなんですよ。高さが有るから裏側にチェーンを通す事が出来ないので、この上にチェーン通しを付けなくてはなりません。石が縦長なので全体が益々長くなります......」と申し上げ、絵を描いて見せた。
「成る程、随分長くなっちゃうね......」ということで、「この様に......」と花びらの中にダイヤを留め、その裏側にチェーンを通す絵を描いてお見せする。そして、立て爪枠の18金を溶かして花びらが作れると説明した。
出来上りを非常に喜んで頂き、有り難く思っている。
帰り際、「優秀なお孫様がいらっしゃると死にたく無いですね!!」と冗談を言うと、「そうね!
ホホホホ......」嬉しそうに、幸せそうに微笑んで下さった。