「もうソロソロ身辺整理をしなくては......」と、H様が沢山の品々をお持ち下さった。
以前当店に色々とご依頼来下さっているF様をよくご存じだとかで、「前々から来ようと思っていたのですが......」と、お出かけが多く時期が遅くなってしまったと仰る。
お出かけの効用のせいか、貴金属のなさり方が自然だし、洋服とのコーディネイトもお上手だな、と見受けられた。
まずご希望を伺い、全体のリフォームの構成を考えるのに1週間頂く事に。それを図面にし、大凡の見積りも出した。
まずはメキシコオパール・キャッツアイ・ダイヤの3 点の宝石使用で、ペンダントヘッドを描きました。了承後これを(PT850)の枠2本を溶かし加工することに。
南洋パールの指輪は、パールをトルコ石で2重に囲み大きめのヘッドに図面を作成しました。私も職人もこのタイプのトルコ石をこの様に留めるのは始めての試み、相談の結果「やってみよう!!」と言うことに。
赤サンゴ(11・5ミリ)は、K18WGのドーナツ型パーツ4個を使用して3個はご希望のチョウカーに、2個はイヤリングをご希望なので、穴を開けK14WGの金具を使用しました。
小粒トルコ石の残りは2連のロングネックレスに組み替え、お預かりのリング枠で無使用分は売却しました。
デザイン画を見て頂いた時点で「うわー!出来上がるのが楽しみだわー!」と歓声、私も楽しく製作出来ました。
この「出会い、あれこれ」も早いもので、15年半になる。始めた頃は主人と娘が同居、雌犬と雄猫と雌猫がいた。
今は私と雌猫1匹(名はシータ)で、優しく遠慮がちな末娘と一緒に暮らしているかのような、穏やか日々である。
しかし、17歳半というシータが「いなくなったら......」という、遠くない未来への恐れが心をよぎる瞬間は毎日あり、シータの朝の挨拶は「今日も宜しく!」、夜の挨拶は「今日も有り難う!」と心を込めて言うようになった。
同級生と出会って、互いに頷く内容はほぼ同じ体調の変化の事で、「声が大きい!」という理由で皆から「元気ですね~!」と言われる我が身も例外ではなさそうだ。
1971年4月に東京神田にある宝石輸入会社のデザイン室に入社した私は、14年間デザイン画を描き現在地に店を開いた。
思えば現時点で46年と4ヶ月この仕事を続けているわけで、50年勤続を目指したいと願うようになった。その3年8ヶ月後、シータは21歳になる。
読者の皆様、願わくば〝宝飾品の身辺整理〞をお急ぎ下さいまして、リフォーム等のお役に立てますよう、節に御願いいたします。既にご依頼下さった皆様には感謝申し上げます。期限切れにナリマセヌヨウ......。
お嬢様の結婚式を控えていらっしゃるとかで、前々から思っていたリフォームを決断なさったと言う。
ダイヤが1キャラ以上有るので「立て爪のデザインのままではとても使用できません!」と、普段に使えるデザインにしたいとご要望。
見本を色々嵌めて頂いてゆっくり御検討なさり、両脇に小粒ダイヤを1個ずつ添えたV字型のものをお選び下さった。
成る程これなら結婚式が終わってからも、どんどん使用できると思いますし、よくお似合いになります。
昨年婚約リングのリフォームをご依頼下さったN様のご紹介で、T様がご一緒にご来店。
お陰様で、N様にリフォームしたデザインがN様に良くお似合いなので、T様も気に入って下さっており、雰囲気が全く違うT様も同じ様なデザインをイメージしてらして、当初お話がまとまらなくなりました。
まず、イメージを"無"にして、当店の見本を色々嵌めていただきました。「これが好き」とハッキリおっしゃったのは、やはり人間工学的見地から考え出した、このデザインでした。
嵌めやすさと、手が長く見えるという「美」を感じさせる、当店のヒットデザイン"NO.1"です。
おじいさまが生前プレゼント下さったチェーンとパール5個を、"どうしたら良い物か?"と長い間思案していたと、娘様とご一緒にご来店。
チェーンは"汗をかくので地肌にはしない"そうで、太いチェーンを溶かして加工、パール5個を留めてピンブローチにする事に、細いチェーンは外れ防止の飾りに使うことをご提案。コイン付のチェーンは同じチェーンを24 ㎝足し、洋服の上から使う長さに加工した。
フィリピン旅行の思い出とおっしゃるパールの2点セット。
「タイピンはすぐ壊れ、カフスのデザインが好みで無い......」とご来店、「好みで無い理由は!?」と聞くと、「角だから......」という。
円形で飽きが来ないデザインを、時間を掛けて思案、シルバーの手加工一点物にする事に......。
タイピンはカフスより大玉なので、針の部分のみの加工。玉に差込む部分を長くし、金具チェーンの外れ防止の為、上下の丸環はPt900に交換してロー付けした。
母が60代の中頃、何かの用事で実家に寄ると、「法事があるのでパールを着けて行こうと、昨日の夜やってみたら、肌の色黒が益々黒く見えてやっていけないよ。黒っぽい色のパールを買おうかな?」と言われ、「成る程、そうかもしれないね!」と、母親の感性が思っていたより優れている、と見直した事があった。
最近は、母の時代以上"肌がより白く見える"ということに気づく人が多いせいか、何人かから黒真珠の注文が入り、お一人お一人に合うものを選んで頂ける様に、大きさと黒は黒でも色毛の違うものを10種類ずつご用意し、顔にあててから決めて頂いた。
通常の40㎝の長さにネックレスを組むと、イヤリングと指輪が出来る。
長めの方はイヤリングだけにする。
元々色白の方ばかりだが、確かに"重みと落ち着き"が加わり、肌も美しくみえる...と思った!!
渋谷のd47ミュージアムの展示会の閉会後、「外国人が二人、一人で3個ずつ買っていきました」という販売者のメモを読んで驚きました。
上野の不忍池や浅草などではすごい外国人を目撃、テレビのニュース等でも爆買いの話は知っていたが、彼らが渋谷のヒカリエの8階にまでいって、日本的な製品を買ってくれたという事実を体験させて貰った事は、昭和生まれの積み重なった常識を壊しました。
その後も、HPの「お客様のお問い合わせ」から、英文で結婚指輪の金額の問い合わせが入り「2週間で出来ます」と答えたところ、「すぐに送料を教えて下さい、 TO 'United Arab Emirates」と言う返事で、アラブ首長国連邦の人だったことが判明。
悲しいけど、「当店は国内しか送ることは出来ません」というシンプルな英文で、幕を閉じた。
そんなことで、平均寿命まで生きるにはまだ20年もあることを考えると、時代に順応していく方向に舵を切り替えないと楽しい人生を味わえないぞ......と判断、一大決心して安い"きりすねブローチ"を手始めに"Creema"という、ハンドメイドのみのサイトに出品を始めた。
買ったけど使いこなせなくて後悔していたスマホで、写真も撮り出品上げも出来るようになった。
二人に一人が高齢者という時代、美しい高齢女性が増えるようにと希望し徐々に65歳以上の人に似合うものも出品するつもりでいる。 結果はどうであれ、完全に新しい時代に首だけは突っ込んだ気がする。
下妻からご来店下さった奥様、「指輪はやらないので、どうしたらいいものか...?」と仰る。
「オパールは割れやすいので、ヘッドには最適ですが...」とご提案。「石が長いのでどういう具合にしたら?」と、デザインを心配していらっしゃるご様子。
「でも、奥様も面長の卵型でいらっしゃいますから、お似合いになると思います」という事で、デザインを考える時間を頂く。
オパールをリングから外して大きさを測り、PT900のリング枠を溶かして創れるような、実物大のデザイン画を作成した。
2~3日後に見て頂くと、「全体の大きさも雰囲気も丁度良いと思う」とおっしゃってくださったので、すぐに制作にとりかかった。
オパールの石は、母親の心のように優しい色で、素敵な贈り物であった。
牛久からお母様に連れられて見えた中学生のNちゃん、写真が入る「ロケットペンダントを創りたい...」「蓋の上にオリオン座の星座の形に天然石を留めてほしい」と言う。
たまたま当店で手加工したシルバー製品の1個だけは、地金の厚みが1ミリ以上有るので、何とか希望が叶えられそうでそれをお勧めした。オリオン座の形のプロポーション、どこの場所に何色の天然石を、天然石の大小の選択、ご希望をすべて書き取って、制作に取りかかった。
出来上りを取りに見えたとき、お母様が「どう? 言った通りできてる?」とお聞きになって、一瞬緊張が走ったが、Nちゃんがニコッと笑って頷いてくれたので、いやはや助かりました。
「どなたのお写真が入るのですか?」と勇気をだして聞いてみると、「おじいちゃんの写真です、この子がなついていたおじいちゃんが亡くなったもんで...」
(アアソウナノカ...)と心の中でNちゃんの心中の悲しみを思った。
遠くまで来て下さって有り難うございました。
古河にお住まいのS様、昨年のはじめに、立爪の婚約指輪と使用しないリング・イヤリングの3点を合わせて、薬指から小指の下がりに沿って斜めに収まる普段に使える指輪を、リフォーム下さった。
今年は「その指輪と一緒に使えるヘッドを......」と、ダイヤヘッド付のチェーン2本、ファッションリング2本、それに前回残った小粒のサファイア4Pでリフォームご依頼、プラチナのチェーンも見合った太さに新調することとなった。0・873キャラットのダイヤの上下に、外した小粒ダイヤのうち同じ大きさの物とサファイヤを配置した。
ちょっと面白い形になったが、S様の明るく気取りのないお人柄には、良くお似合いで、良かった!!
有り難うございました。
4年前にご主人を見送ったF様、その年に遺影を入れるロケットペンダントを依頼下さり、その後いつお会いしても藤色のスギライト(天然石)を蓋の部分に留めたロケットは胸に下がっていた。F様は藤色が特別良く似合うと思えた。
昨年の暮れ、店内でスギライトを見つけたF様、プラチナで作りたいとおっしゃる。「それではロケットペンダントと雰囲気を合わせた方がいいでしょう?!」とご提案。
石の形が全く違うので、実は提案しながらも「出来るかなー?」という不安を抱えており、F様も「うーん! そーねー?」と、曖昧に優しい返事を下さった。
「大丈夫! ピッタリ雰囲気を合わせます!!」と明るく言い切る。
なぜって、デザイン決定は、常に不安からスタートしており、悩んだり夢でうなされたり作り替えたりしても、相手のお顔が見えていさえすれば、必ず納得するものが出来てきたから。
今回もやっぱりそうであった。有り難うございました。
当店のホームページで、結城紬手紡ぎ糸のネックレスをご覧になり、「皮ジャンに合わせたら面白い!」と30代のお洒落な男性が、オーダーメイドにご来店下さった。
眼鏡を掛けることもできる中央水牛の輪の左右と襟首の止め金具部分の左右が開いた"デザイン"をご要望。
"色"は茶の皮ジャンに似合う色、"長さ"は出来上がっている当店のものを試着をしてみて約57㎝に......と3点決めて頂いた。
3色の糸の色・中央部分の水牛の輪を留める金具部分のデザインと糸処理等は、創っていきながらのお任せにさせて頂き、彼のイニシャル「Y」にパールをあしらった。
現在開催中の、渋谷ヒカリエ8階のd47MUSEUMで行われている展示会には、2015年の茨城デザインセレクションに選定となった、〝ブローチ"を出展依頼された。
ブローチは5㎝の円形なので、色の表現がし易い。が、当店で実際に買って下さるのは、ネックレスのほうが多い。昨年暮れに、10年前に買って下さったという、パールを螺旋状に巻いただけのきりすねネックをして筑西の方が、店内に入ってきた。ヨレヨレになった状態なので、「創り直しましょう!」というと、「皆に褒められるので毎日やっているのよ!
新しいの買うから大丈夫......!」という後から、オーストラリアの美術の先生だというご夫婦を連れて、娘さんが入ってきた。「この人達が、きりすねネックを買いたいというので連れてきたのよ!」と。お陰様で、結城の糸は、海を越えオーストラリアへ渡った。
私が中学校まで生活していた実家のご近所さんで、今も変わらず針を握り、洋服の仕立て・和服の仕立て・直しもの等、皆に喜ばれながらお仕事をなさっているN様、80歳になろうとも小綺麗な装いで、その技も知恵もさすがの素晴らしさである。全く後人のお手本と思っている。
その精神力の源となっているのは、どうやらお孫様の存在らしく、日々成長を喜び・楽しみ、まだまだ先の成り行きを見守って行きたいという想いに溢れている。
この度は、お孫様が自治医大病院に医者として就職が決まったので、「このブローチと、結納返しに嫁がくれたこのタイタックで、ヘッドを......」とリフォーム依頼された。
当初は、立て爪型のダイヤがキラキラ美しいので、緑石の上に立て爪枠を乗せてほしい......という御希望でした。
「若い方に立て爪枠は可哀そうかも......」とお答えしましたが、その意味がお解り頂けないので、「リフォームの多くは立て爪枠に留められたダイヤなんですよ。高さが有るから裏側にチェーンを通す事が出来ないので、この上にチェーン通しを付けなくてはなりません。石が縦長なので全体が益々長くなります......」と申し上げ、絵を描いて見せた。
「成る程、随分長くなっちゃうね......」ということで、「この様に......」と花びらの中にダイヤを留め、その裏側にチェーンを通す絵を描いてお見せする。そして、立て爪枠の18金を溶かして花びらが作れると説明した。
出来上りを非常に喜んで頂き、有り難く思っている。
帰り際、「優秀なお孫様がいらっしゃると死にたく無いですね!!」と冗談を言うと、「そうね!
ホホホホ......」嬉しそうに、幸せそうに微笑んで下さった。